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宮司の言葉

宮司の言葉

日本で古くから信仰されてきた神さまは、太陽や山、森、木々など宇宙・世界・森羅万象に宿るとされ、八百万(やおよおよろず;非常に数が多いこと)の神ともいわれます。お米などの収穫を得るにも、日の光や雨が降ることでもたらされる水が必要なように、私たちは自然の恵み無しには、一日も生きていくことができません。科学がどんなに進歩し、社会や生活環境が激変しても、変わることのない真理といえるでしょう。古代の人々も日々の営みのなかで自然の大いなる力を感じ取り、自然への畏敬や信仰の念を持ったのです。農耕の技術や知識が発達していない古代においては、日々の糧を得るのも非常に困難であり、それだけに神様への切実な願い事は、豊作や豊漁であったことでしょう。さらには、人の命を後世へとつなぐ子孫繁栄は、いっそう大きな願いごとだったにちがいありません。日本で最も古くからお祀りされた神、原初の神々は、こうした願いをかなえる神であり、人や作物といった生命を産み出し、繁栄をもたらす神でした。また生命の誕生には2つのものを出会わせ結びつけることが必要です。そのため原初の神は、結びの神でもあったのです。

地主神社の神様は、日本でも非常に古くから祀られた古層の神、原初の神です。京都盆地は、大昔には湖に沈んでいた時代もありましたが、地主神社の境内地は、島のように陸地となっており、「蓬莱山」と呼ばれ不老長寿の霊山として信仰されていたと伝わっています。ご本殿前の「恋占いの石」も近年の研究で縄文時代の遺物とされています。こうした最古の歴史を持つ地主神社の神に古代の人々がささげた祈りは、やはり強いご霊力で命を産み出していただくこと、豊作や子孫の繁栄であったことでしょう。子孫繁栄には男女を巡り合わせ結びつけねばなりません。ですから原初の神である地主神社の神様は、縁をとりもつ結びの神、縁結びの神でもあったのです。

現代の皆様の願い事は、受験合格や商売繁盛、健康長寿など様々おありかと思います。しかしどんな願いごとよりも、まずはお一人お一人が命を授かること、この世に生をお受けになることが大前提ではないでしょうか?命を産み出し、命を授かるには、人と人との結びつきが不可欠であり、そう考えますと、どのお願いごとよりまず最初のお願いごとは、人と人との縁、つまりは出会いや絆であり、古代の人々と同様に「縁結び」ということになります。また男女の縁に限らず、私たちが幸福をえるには、日々良いご縁を授からねばなりません。仕事であれば、良い上司に巡りあうこと、良い取引相手に出会うこと。学生の方なら、良い先生や友人に恵まれること。是非ご縁や絆の大切さを心に刻んでいただき、古来より信仰の篤い地主神社の神様に縁結びの信心を深めていただきたいと思います。

近年、地主神社のご神徳は海外にも広がり、アジア・欧米を始め世界各地からご参拝をいただいています。日本古来の神様が海外でも理解され、ご信仰いただくことは、非常に意義深いことであり、喜ばしく思います。さらにこの信仰の輪が世界のすみずみまでおよび、世界中の人々がご縁を深め、強い絆で結ばれ、平和で愛に満ちた世の中となりますことを、心より願っています。

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平成30年のバックナンバー

平成30年12月 「しまい大国祭」「新年の干支 亥」「大祓祭」

 平成最後の師走となりました。
 この一年のご利益を感謝し、来る年の開運招福を願う「しまい大国祭」を12月2日に執り行います。
 来年の干支「亥(い)」のエト絵馬(500円)の授与も開始いたしますので、ぜひご参拝いただき、来年の福をご祈願くださいませ。

 来年の干支である猪(いのしし)は、山の神の賜り物として尊ばれ、宮中に献上されることもありました。

  猪を献ることあり(日本書紀)
  (猪を献上することがあった)

 野生の猪は夜行性で、夜は餌を求めて歩き回り、朝にねぐらへと帰ります。

  猪のねに行くかたや明けの月(去来抄)
  (猪が寝に行く方に明け方の月がかかる)

 そうした習性は古くから知られていたのでしょうか、朝に猪狩をする歌も詠まれました。

  八十伴(やそとも)の男(を)を 召し集へ(中略)朝狩に 鹿猪踏み起こし(万葉集)
  (多くの男たちを呼び集め、(中略)朝の狩に猪や鹿を追い立てて)

 地主神社でおまつりしている大国主命(おおくにぬしのみこと)という神さまも、猪狩に挑まれたそうです。

  赤き猪この山に在り。(中略)待ち取れ(古事記)
  (赤い猪がこの山にいる。(中略)待ち受けて捕えよ)

 猪突猛進といいますが、何かとあわただしい年の瀬は、早いようで長丁場になりがちです。

  近うて遠きもの。(中略)、師走のつごもりの日、正月(むつき)の朔日(ついたち)の日のほど。(枕草子)
  (近くて遠いもの。大みそかから元日までの間)

 地主神社でも、大みそかの12月31日には「大祓祭」の神事を執り行い、1年間の心身のお祓いをいたします。ぜひご参拝いただき、心も新たに良いお年をお迎えくださいませ。おしあわせに。

平成30年11月「新米」「新嘗祭」「勤労感謝の日」「もみじ祭り」「紅葉」

 天高く馬肥ゆる秋。収穫の秋は、食欲の秋でもあります。新米で炊いた温かいご飯は何よりおいしいものです。
 昔から日本は豊かな稲穂が実る国として称えられてきました。

  豊葦原(とよあしはら)の千五百秋(ちいほあき)の瑞穂(みつほ)の地(くに)(日本書紀)
  (豊かな葦が生い茂り、いつまでもみずみずしい稲穂が豊かに実る国)

 黄金色の稲穂は大切に刈り取られ、脱穀、乾燥、精米と多くの人々の手を経て私たちの食卓に届きます。

  稲搗(つ)けばかかる我(あ)が手を今夜(こよひ)もか殿の若子(わくご)が取りて嘆かむ(万葉集)
  (稲をついてあかぎれのできた手を、今夜も若様が手に取って嘆くでしょうか)

 11月23日の「勤労感謝の日」は、もともと秋の収穫に感謝し、神さまに新米を捧げる「新嘗祭(にいなめさい)」という儀式を行う日でした。

  天地(あめつち)と相栄(あいさか)えむと大宮を仕へまつれば貴(たふと)く嬉(うれ)しき(万葉集)
  (天と地とともにいつまでもお栄えになるようにと、新嘗の大宮にお仕えするのは、貴く嬉しいことです)

 地主神社でも、11月23日には秋の豊作と縁結びのご利益に感謝する「もみじ祭り」を執り行い、紅葉を手にした巫女が神さまに舞を奉納いたします。

  このたびは幣(ぬさ)もとりあへずたむけ山もみぢの錦神のまにまに(古今和歌集)
  (今回の旅ではお供え物の用意もできませんでした。代わりに錦のような山の紅葉を捧げます。神さまどうぞお納めください)

 同日には「お火焚(ひたき)の神事」も執り行い、健康・病気回復もご祈願いたします。

  御火焚や霜うつくしき京の町(蕪村)
  (お火焚の季節、霜の美しい京都の町)

 夜は肌寒さが増すほどに、紅葉は深く色づくそうです。地主神社の境内地のある蓬莱山(宝来山)の周辺も、古くから紅葉の名所として親しまれてきました。どうぞ秋の京都散策の折にはぜひ地主神社にお立ち寄りいただき、素晴らしいご縁と健康をご祈願くださいませ。お幸せに。

平成30年10月「神無月」「新米」「新酒」「因幡の白ウサギ」

 澄んだ空に、秋の日ざしが心地よい季節となりました。

  稲刈れば小草(をぐさ)に秋の日のあたる(蕪村)
  (稲刈りをして広々とした田のほとりで、小さい草に秋の日があたっている)

 10月は新米で新酒を「醸(か)み成(な)す月」であったことから、「醸成月(かんなづき)」と呼ばれるようになったともいわれます。『古事記』では、歌い踊りながら造ったお酒がほめたたえられています。

  歌ひつつ 醸みけれかも 舞ひつつ 醸みけれかも(古事記)
  (歌いながら造ったためか、踊りながら造ったためか[不思議に楽しいお酒です])

 お酒は「百薬の長」ともいわれ、心身を癒やす薬でもありました。『万葉集』でも、そんなお酒の歌が詠まれています。

  験(しるし)なきものを思はずは一杯(ひとつき)の濁れる酒を飲むべくあるらし(万葉集)
  (考えても仕方がないことを考えるより、一杯の濁り酒でも飲んだ方がよいようだ)

 地主神社でお祀りする大国主命という神さまは、薬にゆかりの深い神さまでもあられます。『古事記』では、傷ついたうさぎの傷を癒やす場面も描かれています。

  蒲黄(かまのはな)を取りて(中略)かならず差(い)えなむ(古事記)
  (蒲(がま)の花粉を取って(中略)きっと治るだろう)

 このやさしいお心こそ、「縁むすびの神さま」といわれるゆえんでしょう。この物語は「因幡(いなば)の白ウサギ」としてホームページでもご紹介しておりますので、どうぞご覧ください。

 深まりゆく秋、京都散策の折にはぜひ地主神社にご参拝いただき、心やすらぐひとときをおすごしくださいませ。おしあわせに。

平成30年9月 「菊月」「敬老祭」「長寿箸」

 いよいよ9月となりました。9月は「菊月」とも呼ばれます。
 9月9日の「重陽の節句」には、菊の露を含ませた綿で体を拭うと長生きできるとされてきました。
 『源氏物語』の作者である紫式部も、そんな菊の綿について日記に書き残しています。

  菊の綿(わた)を、(中略)「いとよう老(おい)のごひすて給へ」と(紫式部日記)
  (菊の綿で、(中略)「老いを拭い捨てなさい」と)

 『古今和歌集』では、菊の花を身につけて長寿を願う歌も詠まれてきました。

  露ながら折りてかざさむ菊の花おいせぬ秋のひさしかるべく(古今和歌集)
  (菊の花は露をつけたまま手折って髪に挿そう、長寿の秋が末長く続くように)

 神代の昔、不老長寿の霊山「蓬莱山」として信仰されていたと伝わる地主神社でも、長寿と健康を願う「敬老祭」を執り行います。70歳以上の方には「長寿箸」を授与いたしますので、ぜひご参拝くださいませ。

 健やかな体づくりに欠かせない食生活を支える箸は、神代の昔から大切なものでした。
『古事記』には、神さまが川を流れてきた箸を見つける場面も描かれています。

  箸その河より流れ下りき(古事記)
  (箸がその川を流れ下ってきた)

 「敬老祭」の翌週、9月23日は「秋分の日」。この日を境に夜が少しずつ長くなり、都大路も少しずつ秋らしい趣が深まってゆきます。

  庭草に村雨(むらさめ)降りてこほろぎの鳴く声聞けば秋づきにけり(万葉集)
  (庭の草ににわか雨が降り、こおろぎの鳴く声を聞くと、秋らしくなったものだと思う)

 秋の京都散策の折には、ぜひ地主神社にお立ち寄りただき、ご長寿とご健康をご祈願くださいませ。おしあわせに。

平成30年8月 「えんむすび地主祭り」「立秋」「処暑」

 夏、真っ盛り。涼を求めて木陰に入れば、蝉時雨に包まれます。

  八重葎繁き宿には夏虫の声より外に問ふ人もなし(後撰和歌集)
  (草の生い茂った宿には、蝉の声のほかに訪れる人もありません)

 この夏も暑さを乗り越え、末長いご縁やご幸福をお授かりいただけますように……。
 地主神社では8月5日に「えんむすび地主祭り」を執り行い、心身を清めるお祓いをし、良縁成就・開運招福を祈願いたします。ぜひご参拝くださいませ。

 「えんむすび地主祭り」が終われば、8月7日は立秋です。

  にはかにも風の涼しくなりぬるか秋立つ日とはむべもいひけり(後撰和歌集)
  (急に風が涼しくなったか、なるほど立秋とはよくいったものだ)

 暦の上では秋となりますが、まだまだ暑い日も続くことでしょう。

  朝も秋ゆふべも秋の暑さ哉(鬼貫)
  (朝も秋、夕方も秋のはずが、この暑さよ)

 8月23日は処暑。そろそろ暑さも落ち着き始めるとされる頃です。

  あかあかと日は難面(つれなく)もあきの風(松尾芭蕉)
  (太陽は赤々と照りつけても、風は秋らしさが感じられる)

 地主神社の境内にも、少しずつ秋の風情が漂いはじめます。京都散策の折には、ぜひ地主神社にお立ち寄りいただき、夏から秋へ移りゆくひとときをお過ごしくださいませ。おしあわせに。

平成30年7月 「七夕祭」「大笹」「七夕こけし」

梅雨明けの待たれる頃となりました。7月7日は七夕。『万葉集』では、この日に降る雨を天の川のしずくに見立てた歌も詠まれています。

 この夕(ゆうへ)降り来る雨は彦星(ひこほし)のはや漕ぐ船の櫂(かい)の散りかも(万葉集)
 (七夕のこの夕方に降ってくる雨は、彦星が急いで漕ぐ船の櫂のしずくであろうか)

蒸し暑い夏のひととき、七夕かざりが揺らめく姿は風情があってよいものです。

 七夕まつるこそなまめかしけれ(徒然草)
 (七夕を祭るのも優雅なものだ)

短冊に願いごとを書くのは、布を織る仕事を得意とした織姫にあやかり、手芸や裁縫の上達を願ったことから。『源氏物語』では、織姫を引き合いにだして裁縫の腕前をたたえる場面も描かれています。

 織女の手にも劣るまじく(源氏物語)
 ((裁縫の腕前は)織姫にも劣らないくらい)


『万葉集』では、彦星との逢瀬を願いながら機織りの仕事に精を出す織姫の気持ちも、歌に詠まれています。

 機物(はたもの)の蹋木(ふみき)持ち行きて天の川打橋(うちはし)渡す君が来(こ)むため(万葉集)
 (機織の道具の踏み木で天の川に橋をかけよう、あなたが渡って来られるように)

地主神社でも、7月7日は「七夕祭」を執り行います。
本殿の両脇にしつらえた大笹には、ご自分とお相手のお名前を書き添えた「七夕こけし」をつるし、恋愛成就をご祈願ください。ご縁を授かりたいかたのイメージをお書きいただくこともできますので、お相手を探しておられる方も、ぜひご祈願くださいませ。

七夕祭が終われば、7月23日は「大暑」。夏の暑さが最も強まるとされる頃です。地主神社の境内のある蓬萊山も、いっそう緑が深まってゆきます。

 山も庭に動きいるゝや夏座敷(芭蕉)
 (緑なす山が動いて庭に迫ってくるようだ、この夏座敷にいると)

地主神社で良きご縁をご祈願くださいませ。おしあわせに。

平成30年6月 「夏越しの大祓祭」「茅の輪」「人形(ひとがた)祓い」「衣替え」

衣替えの季節となりました。軽やかな夏服をまとうと身も心も軽やかになるようです。
旅を愛した江戸時代の俳人・松尾芭蕉は、こんな衣替えの句を詠んでいます。

 一つぬひで後(うしろ)に負(おひ)ぬ衣がへ(芭蕉)
 (旅の途中のことゆえ、重ねていた着物を一枚脱いで後ろに背負えば、それが衣替えだ)

地主神社の主祭神である大国主命(おおくにぬしのみこと)のお父様にあたる素戔鳴命(すさのおのみこと)という神さまも、あるとき旅をしておられました。旅先で一夜の宿を借りられたとき、そのお礼として宿の主人にチガヤという草で作った茅の輪を与えて、こうおっしゃったそうです。

 茅の輪を以ちて腰に着けてたる人は、免れなむ(風土記)
 (茅の輪を腰に着けている人は、病気にかかることはないでしょう)

お言葉通り、茅の輪を賜った家の人々は健やかに末長く栄えたといいます。

6月30日の「夏越しの大祓祭」でも、境内にしつらえた大きな茅の輪の中をくぐって半年間のけがれを祓い、これから半年間の無病息災をご祈願いただけます。
輪をくぐるときは、次の歌を唱えながらくぐるとよいそうです。

 水無月の夏越(なごし)の祓へする人は千歳(ちとせ)の命延ぶといふなり(拾遺和歌集)
 (6月の夏越しの祓いをする人は、寿命が千年も延びるというそうだ)

また、昔からこの日は「人形(ひとがた)祓い」の神事も行われてきました。地主神社でも、小さな紙人形にけがれをうつして水に流す人形祓いをお受けいただけます。
梅雨から夏へ、季節の変わり目は何かと体調もくずしやすいとき。どうぞ、地主神社で身も心も新たにしていただき、これからの半年間も健やかにおすごしくださいませ。おしあわせに。

平成30年5月「例大祭 地主祭り(神幸祭)」「子どもの日」「薬狩」「菖蒲」

5月5日は、子どもの日。子どもの健やかな成長を願うこの日は、かつては薬草となるショウブやヨモギなどを採集する「薬狩(くすりがり)」の日でした。

  五月の五日に、(中略)薬猟(くすりがり)す。(日本書紀)
  (5月5日に薬狩をする)

 香り高いショウブは邪気を払う力があるとされ、宮中にも献上されました。

  五日の菖蒲(さうぶ)の輿(こし)などもてまゐり、(枕草子)
  (五月五日の菖蒲の輿などを持って参上し)

 ショウブは武勇を重んじる尚武(しょうぶ)に通じることから、その力にあやかろうと、子どもたちが葉を刀に見立てて遊ぶこともあったそうです。

  五月の節句。幟(のぼり)出して菖蒲刀(しょうぶがたな)をささせまして(好色一代女)
  (5月5日は幟を出して(子どもの腰に)菖蒲の刀をさして)

 地主神社でも皆さまの末長い健康と家内安全などを願い、5月5日に「例大祭 地主祭り(神幸祭)」を執り行います。この祭儀は今から千年ほど前、円融天皇が地主神社に行幸された際に臨時祭として仰せつかったのが始まりです。

 平安時代、円融天皇は地主神社のほかにも都の各所へお出かけになりました。『今昔物語集』には、そんな行幸の様子も伝えられています。

  円融院の天皇、(中略)出(いで)させ給(たまひ)けるに、(中略)物見車(ものみぐるま)所無(な)く立重(たてかさね)たり。(今昔物語集)
  (円融天皇が(船岡という所へ)行幸なさったとき、その姿を拝見しようと物見車が立ち並んだ)

 新緑の照り映える5月は、地主神社にも大勢の方がご参拝にいらっしゃいます。どうぞ京都散策の折には、ぜひ地主神社にご参拝いただき、ご健康や厄除けをご祈願くださいませ。おしあわせに。

平成30年4月 「花見」「地主桜」「えんむすび祈願 さくら祭り」「穀雨」

花だよりの聞かれる頃となりました。この季節は、都大路のそこかしこが華やかな彩りにあふれます。

  見わたせば柳桜をこきまぜて都ぞ春の錦なりける(古今和歌集)
  (見渡してみると、柳と桜が織りまぜられて、都はまるで春の錦のようだ)

 地主神社も昔から桜の名所として知られ、その美しさは謡曲「田村」にも詠われました。

  それ花の名所多しといへども(中略)地主の桜にしくはなし(田村)
  (花の名所は数多くあるけれど、地主の桜に勝るものはない)

 境内に数ある桜の中でも特に名高いのは、平安時代に嵯峨天皇が愛でられたと伝えられる「地主桜」です。
 地主桜は一本の木に八重と一重の花が同時に咲くという珍しい桜で、謡曲「熊野(ゆや)」でも、その見事な花姿が讃えられています。

  雲かと見えて八重一重、咲く九重の花盛り(熊野)

 この、地主桜にゆかりの謡曲「熊野」と「田村」は、4月8日に執り行います「えんむすび祈願 さくら祭り」にて奉納いたします。ぜひこの機会に、ゆかりの曲をご堪能くださいませ。

 また、当日は、境内にある北村季吟の句碑の前にて次の句の献詠もいたします。

  地主からは木の間の花の都かな(北村季吟)
  (桜の花の間から見る京の町は、まさに花の都だ)

 都の春は、やがて若葉の季節を迎えます。4月20日は、穀雨。春に蒔いた種や苗を芽吹かせ、穀物を育む恵みの雨が降るとされる頃です。

  春雨やふた葉にもゆる茄子種(なすびだね)(芭蕉)
  (春雨の中を茄子の双葉が芽生えている)

 新たな出会いの花が咲き、夢や希望の芽吹くこの季節もぜひ地主神社にご参拝いただき、良きご縁をお授かりくださいませ。おしあわせに。

平成30年3月「弥生」「ひな祭り」「人形(ひとがた)祓い」「春分の日」

みずみずしい芽吹きの待たれる季節となりました。3月の異称である「弥生」は、「いやおい」が変化したものともいわれます。「いや」は「ますます」、「おい」は「生(お)い」で「成長する」という意味です。

  呉竹のいと若やかに生ひ立ちて(源氏物語)
  (呉竹がたいそう若々しく成長して)

 3月3日のひな祭りも、女の子の健やかな成長を願う節句です。ひな壇に飾られる調度類は、お姫さまのお嫁入り道具にならったものとされています。
 昔は、娘が生まれると桐の木を植え、やがて嫁ぐ日に箪笥を作るという風習もあったそうです。

  雛祭り娘が桐も伸にけり(一茶)
  (ひな祭りだ、娘のために植えた桐の木も伸びたなあ)

 もともとひな祭りは、紙の人形(ひとがた)にけがれを移し、川や海などに流すお祓いの行事でした。『源氏物語』にも、光源氏が海で人形(ひとがた)祓いをする場面が描かれています。

  舟にことことしき人形乗せて流す(源氏物語)
  (舟に人形(ひとがた)を乗せて流す)

 地主神社でも、古来より神道に伝わる「人形(ひとがた)祓い」をお受けいただけます。ひな祭りにちなみ、ぜひご祈願ください。

 3月21日は、春分の日。だんだん日が長くなり、春めいてくる頃です。

  春はあけぼの。やうやう白くなりゆく、山ぎはすこしあかりて(枕草子)
  (春は、明け方。少しずつ白みゆく空の山際が少し明るくなって)

 地主神社の境内も日ごとに光あふれ、春の花が次々と咲き始めます。ぜひ地主神社で早春の息吹をお楽しみくださいませ。おしあわあせに。

平成30年2月「節分祭」「厄除守」「福豆」「立春」

2月3日は、節分。鬼の面をかぶって豆まきを楽しむ方もおられることでしょう。

 もともと節分は「季節の分かれ目」という意味で、宮中では、鬼の姿に扮した人を大声で追い立てる「鬼やらい」という儀式が行われていました。

  疫疾(えやみ)ありて、(中略)大きに儺(おにやらひ)す。(続日本紀)
  (疫病があったので「鬼やらい」の儀式をした)

 室町時代の日記には、豆を投げられて逃げ出す鬼の姿も描かれています。

  福は内へ入豆の今夜もてなしにひろひひろひや鬼はいづらん(宗長手記)
  (「福は内」と唱えて投げられた豆を拾いながら、鬼は家から出て行くのだそうだ)

 滋味ゆたかな豆は、神さまのおからだから生まれ出たものとされ、邪気を払う力があるとされてきました。

  二つの目に稲種(いねだね)生(な)り、(中略)尻に大豆(まめ)生りき。(古事記)
  (二つの目に稲種ができ、(中略)尻に豆ができた)

 地主神社でも、2月3日には「節分祭」を執り行い、福豆をまいて厄除け・開運招福・病気回復を祈願いたします。厄除守や福豆(一袋500円)も授与いたしますので、ぜひご参拝ください。

 節分の翌日は、立春。まだまだ寒い日も続きますが、草木が芽吹き、鳥たちのさえずる春はすぐそこです。

  み雪降る冬は今日のみうぐひすの鳴かむ春へは明日(あす)にしあるらし(万葉集)
  (雪の降る冬は今日だけで、明日からは鶯の鳴く春でしょう)

 どうぞ心身ともに健やかに、やがて来る春をお迎えくださいませ。おしあわせに。

平成30年正月 「えんむすび初大国祭」「初詣」「初夢」

あけましておめでとうございます。
新年を迎えた地主神社の境内は、いっそう澄みわたるような清らかさです。

 正月一日は、まいて空のけしきもうらうらと、(枕草子)
 (正月一日は、まして空の様子もうららかで)

晴天だけでなく、昔は新年に降る雪や雨も豊年のしるしとされ、おめでたいものとされていました。

 新(あらた)しき年の始めの初春(はつはる)の今日降る雪のいやしけ吉事(よごと)(万葉集)
 (この新春に次々と舞い降りる雪のように、ますます良いことが重なっておくれ)

これからの一年も、皆さまに素晴らしいご縁がありますように。
そんな願いを込めて、ことしも地主神社では、お正月三が日は「えんむすび初大国祭」を執り行います。ご参拝いただきました皆さまには、無料にて「開運こづち」をお授けいたします。

こづちといえば、七福神の一人でいらっしゃる大黒天も、大きな袋と小槌をもった姿をしておられます。そんな七福神が乗った宝船の絵に、こんな歌を書いた紙を枕の下に敷いて眠ると、よい初夢が見られるそうです。

 長き世のとをの眠りのみな目覚め波乗り船の音のよきかな
 (長い夜を眠りについている皆が目覚めてしまうほど、進みゆく船の波音の心地よさよ)

地主神社の主祭神でいらっしゃる大国主命さまも、大きな袋をかついでおられます。

 ふくろを負へども汝命(いましみこと)獲(え)たまはむ(古事記)
 (袋を背負ってはいますが、あなた様(大国主命)がお姫様と結婚されるでしょう)

地主神社には、そんなおめでたいお姿にも通じる、撫で大国さまや良縁大国さまもいらっしゃいます。初詣の折にはぜひご祈願いただき、一年の誓いを新たになさってください。

どうぞ、本年もぜひ地主神社で素晴らしいご縁をお授かりいただき、良き一年をおすごしくださいませ。おしあわせに。
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