えんむすびの神さま 京都地主神社
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宮司の言葉(バックナンバー)

 

今月の宮司の言葉
平成22年度分バックナンバー
平成22年12月「しまい大国祭」「新年の干支 うさぎ」「大祓祭」
 今年もまた年の瀬がめぐってきました。この一年、ご参拝いただきました皆さま方には地主大神様のご利益を授かられ、新しい年にはますますのご隆盛となられますことをお祈り申し上げます。
 12月5日には、一年のご利益を感謝するとともに来る年の開運招福を願う「しまい大国祭」をとりおこないます。この日より新年の干支である「うさぎ」の絵馬(500円)も授与いたしますので、ぜひご参拝くださいませ。

 うさぎといえば、よく知られた神話「因幡の白うさぎ」には、地主神社で縁結びの神さまとしてお祀りしている大国主命が登場します。因幡の国を旅しておられた大国主命は、傷を負って泣いているうさぎに出会い、治し方をお教えになりました。

  「教への如くせしに、その身本(もと)の如くになりき。これ稻羽(いなば)の素莵(しろうさぎ)なり」(古事記)
  (〈大国主命が〉教えた通りにすると、うさぎの傷ついた体は元通りになりました。これが因幡の白うさぎです。)

 命を助けられたうさぎは、大国主命に次のように約束します。

  「汝(いまし)命(みこと)ぞ獲(え)たまはむ」(古事記)
  (あなたさまが〈八上姫と〉結婚されるでしょう)

 こうして、持ち前の優しさを発揮して美しい姫の心をとらえた大国主命は、「縁結びの神さま」として信仰されるようになったのでした。

 万葉集では、次のような歌にもうさぎが詠み込まれています。

  「等夜(とや)の野に兎ねらはりをさをさも寝(ね)なへ子ゆゑに母にころはえ(万葉集)
  (野でうさぎを狙うではないけれど、ろくに一緒にいてくれないあの娘のせいで、お袋に叱られたよ)

 若い妻のおてんばぶりに苦労する夫の気持ちを詠んだものでしょうか。飛び跳ねるうさぎの愛らしい姿が目に浮かぶようです。
 年の瀬は何かとあわただしくなりますが、「うさぎの登り坂」といわれるように、うさぎはその跳躍力でどんな坂道でも駆け上がってゆきます。ひと足お先にうさぎのご利益にあやかりたいものです。

 12月31日には、1年間の心身のお祓いをする「大祓祭」の神事をとりおこないます。
どうぞぜひご参拝いただき、清らかな気持ちで新年をお迎えくださいませ。おしあわせに。

平成22年11月「勤労感謝の日」「もみじ祭り」「お火焚の神事」
 11月23日は勤労感謝の日です。この日はもともと秋の新米の収穫を感謝する新嘗祭(にいなめさい)が行われていた日でした。
 平安時代には新嘗祭の翌日に「豊明(とよのあかり)の節会(せちえ)」が催され、新米で作った酒を捧げて五穀豊穣を祈願しました。万葉集では、そのときの様子が次のようにうたわれています。

  「天地(あめつち)と久しきまでに万代(よろづよ)に仕へまつらむ黒酒白酒(くろきしろき)を」(万葉集)
  (天地とともに末長く万代にお仕えいたしましょう。黒酒や白酒を捧げて)

 また、選ばれた4〜5人の舞姫が登場し、華やかに舞い踊りました。そんな舞姫の美しさを詠んだ歌も新古今集に収められています。

  「天(あま)つ空豊(とよ)の明(あか)りに見し人のなほ面影のしひて恋しき」(新古今集)
  (豊明の節会で見たあなたの面影が、今も恋しくてなりません)

 地主神社でも、秋の豊作と縁むすびのご利益に感謝を込めて11月23日に「もみじ祭り」を執り行い、もみじの名所・蓬莱山(宝来山)の紅葉を手にした巫女が神楽「もみじの舞」を奉納いたします。京都で紅葉狩りを楽しまれる折りには、ぜひお参りください。

 紅葉といえば楓ですが、万葉の昔には楓は「かえるで」と呼ばれていました。葉の形を蛙の手に見立てた呼び名だそうです。万葉集には、そんな楓に寄せた歌もあります。

  「我がやどに もみつかへるて 見るごとに妹を懸(か)けつつ 恋ひぬ日はなし」(万葉集)
  (庭で色づく楓を見るたびにあなたを心にかけて、恋しいと思わない日はありません)

 季節の変わり目には、遠く離れている人のことがとりわけ気にかかるものです。特に秋は、かわりゆく木の葉の色をみるにつけ、大切な人への思いもいっそう深まるのではないでしょうか。

 地主神社の「もみじ祭り」と同日に行われる「お火焚の神事」では、皆さまの健康・病気回復もご祈願いただけます。季節がすすみ冷え込む日が増えてきました。どうぞお風邪など召されぬようご自愛くださいませ。
 おしあわせに。


平成22年10月「寒露」「石笛」「しめ縄」
 10月8日は「寒露」。野では露が結び、虫たちが鳴き始める頃とされています。万葉の昔から虫の声は人々の心をひきつけてきました。

  蔭草(かげくさ)の生ひたるやどの夕影に鳴くこほろぎは聞けど飽かぬかも(万葉集)
  (草の生い茂る庭で夕暮れ時に鳴くコオロギの声は、いくら聞いても飽きないなあ)

 秋はこうした素朴な音色に心が癒される思いがします。自然の奏でる音楽といえば、地主神社には縄文時代から伝わる石笛があります。特別な祭礼にのみ奏されるものですが、このホームページでも音色をお届けしておりますので、ぜひ秋の夜長のひとときにお聴きくださいませ。

 一方、運動会などはにぎやかな音楽を耳にします。運動会などでよく行われる綱引きは、もともとは吉凶を占う神事の一つでした。
 綱や縄は神さまとのかかわりも深く、神社のしめ縄は、天照大神(あまてらすおおみかみ)が天岩戸からお出ましになった際、二度とお隠れにならないように入り口に縄を張ったことに由来しています。

  「尻久米(しりくめ)縄をその御後方(みしりへ)に控(ひ)き度(わた)して」(古事記)
  (しめ縄をその後ろに引き渡して)

 その天照大神(あまてらすおおみかみ)の弟にあたるのが、地主神社でお祀りしている素戔嗚命(すさのおのみこと)という神さまです。この神さまは強いお酒を造り、ヤマタノオロチという大蛇に飲ませて退治したことでも有名です。

  「八塩折(やしほをり)の酒を醸(か)み」(古事記)
  (何度もくり返し醸した濃い酒を造り)

 秋は新米による新酒の仕込みが始まる季節でもあります。もともとお酒は神さまからの賜り物とされ、神さまとの交流の場でいただくものでした。集まった人々によって宴も催されていたようです。

 初秋は、夏の暑さからもやっと解放され、涼風に心も穏やかになる季節です。秋の深まりと共に地主神社もたくさんのご参拝の方でにぎわいます。日頃の神様へのご加護の感謝も込めて、地主神社にご参拝下さいませ。
 おしあわせに。

平成22年9月「敬老祭」「長寿箸」「蓬莱山」「恋占いの石」
 9月23日は「敬老の日」です。地主神社には、縁結びの神様とともに長寿の守り神である大田大神さまもお祀りされており、毎年「敬老祭」を執り行って皆様の長寿をご祈願しております。70歳以上の方には「長寿箸」と「開運こづち」を授与いたしますので、ぜひご参拝くださいませ。

 古来より箸は、神様をお祀りする儀式に用いられていた神聖なものでした。『古事記』には神様のお告げに従って箸を海に浮かべる場面もあります。

  「箸と葉盤(ひらで)とを多(さは)に作りて、皆皆大海に散らし浮けて」(古事記)
  (箸と皿とをたくさん作り、大海に散らし浮かべて)

 また、箸は二本で一膳となることから、兄弟などが仲むつまじい様子も表していました。

  「箸(はし)向(むか)ふ弟(おと)の命(みこと)は」(万葉集)
  (箸のように仲良く向き合っていた弟は)

 食物をいただくお箸は、私たちが生きながらえるために欠かせない大切なものです。
お箸を手にみんなで食卓を囲むことは、お互いの長寿を祈りあうことにもつながるのではないでしょうか。

 長寿といえば、地主神社の境内地は古来より不老長寿の霊山「蓬莱山(宝来山)」として信仰を集めてまいりました。『日本書記』には、海の彼方の蓬莱山に行く場面が描かれています。

  「(前略)海に入(い)る。蓬莱山(とこよのくに)に到りて(後略)」(日本書紀)
  (海に入って蓬莱山(とこよのくに)に到り)

 「とこよのくに」とは、海の彼方にあると考えられていた不老不死の世界のことです。太古の昔には京都盆地も水の底にあり、地主神社の蓬莱山だけが水上にそびえていたと伝えられます。また境内の「恋占いの石」は縄文時代の遺物といわれ、今なお多くの人々のご縁を見守り続けています。

 地主神社の神様は京都でも最古の歴史を持ち、人々の幸福を太古より守ってこられた神様なのです。皆様も地主大神様のご利益授かられ、末永くお健やかに、喜び多い日々を過ごされますように。おしあわせに。


平成22年8月「お盆」「五山の送り火」「警蹕」「秋の七草」
 今年もお盆の季節になりました。京都のお盆には「五山の送り火」という行事があります。これは、都大路を取り巻く5つの山に「大文字」などの文字をかたどった火をともし、お盆に帰ってこられたご先祖を再びお送りするものです。
 火は古来より神聖なものとされ、『古事記』では火から生まれた神さまもおられました。

  その火の盛りに燃ゆる時に生みし子の名は、火照命(ほでりのみこと)(古事記)
  (その火が盛んに燃えるときに生んだ子の名はホデリノミコトです)

 また、『万葉集』では、火影に照らされた愛しい人の姿を思い起こす歌も詠まれています。

  燈火(ともしび)の影にかがよふうつせみの妹(いも)が笑(え)まひし面影(おもかげ)に見ゆ(万葉集)
  (ともしびの火影にきらめいていたあの娘の笑顔が今も目に浮かぶ)

 お盆は仏教の伝来とともに始まった行事ですが、もともと日本には節目ごとに神さまやご先祖を迎えておまつりする習慣がありました。

 地主神社で毎月行われている「えんむすび地主祭り」でも、「オー」という低い声を神職が発する儀式があります。この声は「警蹕(けいひつ)」といい、神さまのお出ましをお願いするものです。
 『枕草子』ではそんな警蹕の声の荘厳さが讃えられています。

  警蹕など「をし」といふ声聞ゆるも(中略)いみじうをかしきに(枕草子)
  (「オー」という警蹕の声が聞こえるのも(中略)とても素晴らしい)

 また、ご先祖をおまつりするときに「秋の七草」を飾ることもあります。秋の七草は、古く万葉の時代から秋を代表する花として親しまれてきました。

  萩の花 尾花(おばな)葛花(くずはな)なでしこの花 をみなえし また藤袴(ふぢはかま)朝顔の花(万葉集)
  (萩の花 尾花 葛花 なでしこの花 女郎花(おみなえし)また藤袴 朝顔の花)

 ちなみに最後の「朝顔」は現在でいう「桔梗(ききょう)」の花だとされています。

 立秋を迎える8月は暦の上ではもう秋ですが、まだまだ暑い日も続くことでしょう。
残暑厳しき折には、ぜひ地主神社を訪れていただき、凛とした境内に涼をお求めください。おしあわせに。


平成22年7月「天の川」「七夕祭」「七夕こけし」
 7月7日は七夕。一年に一度だけ、織姫と彦星が会える日です。二人の逢瀬がかなうように、夜空は晴れていてほしいと願う気持ちは、清少納言の時代から同じだったようです。

  七月七日は曇り暮らして夕方は晴れたる(枕草子)
  (七月七日は、日中は曇って夕方からは晴れた)

 「万葉集」では、彦星を待ちかねた織姫が天の川のほとりを行ったり来たりする様子が歌に詠まれています。

  霞(かすみ)立つ天の川原に君待つとい行き帰るに裳(も)の裾(すそ)濡れぬ(万葉集)
  (天の川であなたを待って川原を行ったり来たりするうちに裾がぬれてしまいました)

 そんな織姫を応援するように、天の川に橋をかけてくださいと願う歌もあります。

  天の川棚橋渡せ織女(たなばた)のい渡らさむに棚橋渡せ(万葉集)
  (織姫が渡れるように、天の川に棚のように板を渡した橋をかけよ)

 ふたりが無事に会えるように、かささぎが翼を寄せあって天の川に橋を渡すとも考えられていました。「枕草子」でもその橋がたたえられています。

  橋は(中略)かささぎの橋。(枕草子)
  (橋は(中略)、天の川にかささぎが渡すという橋も風情がある)

 天空に大きく横たわる天の川は、昔から人々の関心を集めていたようで、「古事記」では神さまが集まる場所とされていました。

  天(あめ)の安(やす)の河原(かわら)に八百万(やほろづ)の神を神(かむ)集(つど)へに(古事記)
  (天の安河(やすのかわ)の河原に多くの神々を召集して)

 神さまゆかりの川原でかたく結ばれたふたりの絆にもあやかり、地主神社の「七夕祭」では、「七夕こけし」で恋の願掛けをおこないます。織姫と彦星に見立てた一組の紙こけしに、想う人の名前と自分の名前を書いて結びあわせ、本殿両側の大笹につるすというものです。

 笹は、殺菌作用があることなどから古来より神聖なものとされていました。「万葉集」には、さらさらと鳴る笹の葉の音に、変わらない想いを誓う歌も詠まれています。

  笹の葉はみ山もさやにさやげども我れは妹思ふ別れ来(き)ぬれば(万葉集)
  (笹の葉が風にさわいでも、わたしはあの人を思いつづけます)

 神代の昔から大空で変わらぬ心を確かめ合う彦星と織姫のように、今年も7月7日は地主神社の「七夕祭」で大切な人との絆を深め、あるいは、新しい良き出会い、ご神縁をご祈願下さい。おしあわせに。

                                                            ☆地主神社「七夕特集」ページ

平成22年6月「夏越しの大祓い」「茅の輪」「人形祓い」
 早いもので、今年も一年の折り返しの月を迎えました。6月30日に行われる「夏越(なご)しの大祓い」は、これまで半年間のけがれを祓い、これから半年の無病息災を祈願する神事です。

 地主神社の境内では、チガヤという草で作られた直径2メートルにもなる大きな「茅の輪」を本殿前に設えます。この輪をくぐることを「茅の輪くぐり」といい、くぐった人は残りの半年も元気で過ごせるといわれます。これは、スサノオノミコトという神さまが、ある人に次のようにおっしゃって茅の輪を贈られたことに由来しています。

  茅の輪を以ちて腰に着けて在る人は、免れなむ(風土記)
  (茅の輪を腰に着けている人は、(病気が流行っても)かかることはないことでしょう)

 当日は、小さな「茅の輪守り」も授与いたします。ぜひお授かりいただき、ご家族や大切な方の無病息災をご祈願くださいませ。

 この神事は古来より都人に重んじられ、さまざまな和歌も詠まれてきました。特に、次の歌を唱えながら茅の輪をくぐると、いっそうご利益がいただけるといわれています。

  水無月の夏越しの祓へする人は千歳(ちとせ)の命延ぶといふなり(拾遺和歌集・よみ人しらず)
  (夏越しの祓いをする人は、寿命が千年も延びるというそうだ)

 チガヤは、茅の輪に使われるなど神聖なものとされる一方、その花のつぼみを食用にすることもあったようです。『方丈記』には、そんなチガヤの花を摘む場面も登場します。

  茅花(つばな)を抜き、岩梨(いはなし)を採り(方丈記)
  (チガヤの花を抜き、コケモモの実を採り)

 また、「夏越しの大祓い」の当日は、人をかたどった紙に息を吹きかけて自身の身の代わりとして水桶に流し、さまざまな厄を水に流す「人形(ひとがた)祓い」もございます。茅の輪くぐりと同様に、古来より伝わる由緒ある魔よけのお祓いです。

 どうぞ、残りの半年もお健やかにすごされますように。おしあわせに。

平成22年5月「子どもの日」「こいのぼり」「菖蒲」「例大祭 地主祭り」
 大空を泳ぐこいのぼりが見られる季節となりました。5月5日は「子どもの日」。かつて中国では鯉が滝をのぼるという故事があったことから、立身出世にゆかりの魚とされ、男子の成長を願ってこいのぼりを飾るようになりました。
 『徒然草』でも、鯉は一番の魚であると讃えられています。

  鯉ばかりこそ(中略)やんごとなき魚なり。(徒然草)
  (鯉ばかりは(中略)何といっても第一番の魚だ)

 鯉は昔から身近に親しまれていた魚で、『日本書紀』にも鯉を池に放して眺める場面が登場します。

  鯉魚(こひ)を池に浮(はな)ちて、朝夕(あさよひ)に臨視(みそなは)して(日本書紀)
  (鯉を池に放って朝夕に鑑賞して)

 また、菖蒲湯に入るのを楽しみにしておられる方もおられることでしょう。ショウブは、読みが「尚武」や「勝負」に通じることから、男子の節句に用いられるようになったといわれます。
 もともとショウブは、香りがよく、葉が剣の形をしていることから、古来より魔よけとして用いられていました。気候が温暖になるこの季節には、さまざまな香料を入れて作ったくすだまにショウブの葉を通し、疫病退散を願う儀式などが行われていました。

  ほととぎすいとふ時なしあやめぐさかづらにせむ日こゆ鳴き渡れ(万葉集)
  (ほととぎすよ、菖蒲(しょうぶ)のかずらを作る5月5日には、ここを鳴いて渡っておくれ)

 『枕草子』でも、ショウブを頭に挿して儀式に臨む人の姿が描かれています。

  菖蒲(さうぶ)のかづら、(中略)いみじうなまめかし。(枕草子)
  (菖蒲(しょうぶ)のかずらをつけ、(中略)たいへん優雅で美しい)

 地主神社でも、5月5日には「例大祭 地主祭り(神幸祭)」 を執り行います。約千年前に行われた臨時祭を起源とする由緒あるお祭 りで、家内安全や良縁達成を祈願するものです。かつて地主桜を御所に 献上した白川女をはじめ、武者や稚児などが練り歩く神幸行列もござい ます。京都・東山にお越しの際は、ぜひご参拝くださいませ。おしあわせに。

平成22年4月「えんむすび祈願 さくら祭り」「地主桜」 「熊野(ゆや)」
 お花見の季節となりました。桜の花びらは一重のものや八重のものなどさまざまな種類があります。地主神社で咲き続けてきた地主桜は、一本の木に一重と八重の花が咲くという珍しい桜です。平安時代でも、桜といえば花びらが注目されていたようです。

  桜は、花びら大きに、葉の色濃きが、枝細くて咲きたる。(枕草子)
  (桜は、花びらは大きく、葉の色は濃く、細い枝に咲いたのがよい)

 近ごろは温暖化のせいか桜の開花が早くなったといわれますが、「源氏物語」にも、
いち早くほころび始めた桜の美しさが描かれています。

  とく開けたる桜の色もいとおもしろければ(源氏物語)
   (早く咲いた桜の色もたいへん美しいので)

 桜の花の移ろいやすい美しさゆえに、さらに桜への思いを深めさせるのでしょうか。「熊野(ゆや)」という謡曲では、地主神社に咲く地主桜を惜しむ気持ちがうたわれています。

  地主権現の花の色 沙羅双樹の理なり(熊野)
  (地主桜の花の色のように、世は移り変わってゆくものだ)

 どんなに小さな季節の移ろいの中にも、神さまのお心は宿っているものです。地主神社では、4月18日に「えんむすび祈願 さくら祭り」をとりおこない、ゆかりの謡曲「熊野」と「田村」を奉納いたします。また、境内には松尾芭蕉の師であった北村季吟の句碑があり、その前で宮司が季吟の句を献詠いたします。

  地主からは木の間の花の都かな(季吟)
 (地主桜の間から見える京は、花盛りの都であることよ)

 東山の懐に抱かれた地主神社の境内からは、京都の景色が一望できます。地主桜のほかにもソメイヨシノ、八重桜、黄桜、なども美しく咲きそろいます。いにしえの都人が讃えた古都の春を愛でに、京都散策の折にはぜひお参りくださいませ。おしあわせに。

平成22年3月「ひな祭り」「人形(ひとがた)祓い」「貝合わせ」
 ふとした陽差しに早春のきらめきが感じられる頃となってきました。3月3日は、ひなまつり。愛らしいおひな様には、やわらかな春の陽差しがよく似合います。

  三月三日は、うらうらとのどかに照りたる。(枕草子)
  (三月三日は、うららかに穏やかに日が照っているのがふさわしい)

 もともとひなまつりは、人の形に似せた紙の人形を船にのせて海へ流し、けがれを祓うという儀式でした。「源氏物語」にもその場面が登場します。

  舟にことことしき人形乗せて流すを見たまふに(源氏物語)
  (舟に人形(ひとがた)を乗せて流すのをご覧につけても)

 地主神社でも、古式ゆかしい紙の人形(ひとがた)に息を吹きかけ、お祓いしたいことを書いて水に溶かす「人形(ひとがた)祓い」で厄除け、災難除けをお祈りすることができます。ひな祭りにちなんでぜひご祈願ください。

 ところで、ひなまつりのごちそうにハマグリのお吸い物がありますが、これは、海でお祓いをした折に潮干狩りをしたことに由来するともいわれています。
 ハマグリはミネラルやビタミンも豊富に含まれていますから、健康を願う思いも込められていたのでしょうか。「古事記」ではハマグリの汁でやけどを治す様子が語られています。

  母(おも)の乳汁(ちしる)を塗りしかば、麗しき壮夫(をとこ)に成りて(古事記)
  (ハマグリの汁で溶いた母の乳汁を塗ったところ、立派な男になって)

 また、ハマグリといえば平安時代には「貝合わせ」という遊びの道具にもなりました。ハマグリの貝殻は、他の貝とは合わないことから夫婦仲が良いことを表すとされ、嫁入り道具の一つにもなったそうです。平安時代の物語集である「堤中納言物語」にも、姫君が貝合わせをするために貝を集める場面が登場します。

  貝合(かいあわせ)させ給(たま)はむとて、いみじく求めさせたまふ(堤中納言物語)
  (貝合わせをなさるということで、たいそうお探しになって)

 ハマグリは汚れた海には住まないといわれます。私たちも、美しい地球を次代に伝えられるように環境に配慮した暮らしを心がけるとともに、日々を清らかな気持ちで送りたいものです。
 豊かな自然に恵まれた地主神社でも、3月は福寿草やミツマタ、枝垂れ梅などが美しい花を咲かせ始めます。ご参拝の折には、神さまのもとで春の息吹を身近に感じていただけることでしょう。おしあわせに。

平成22年2月「節分祭」「鬼」「豆」「梅」
 2月3日は節分です。地主神社でも午後2時より「節分祭」が執り行われ、厄除守や、縁起物のこづち守りが入った福豆を求める人で境内がにぎわいます。
 もともと節分は、中国の「追儺(ついな)」という厄払いの行事が日本に伝わったものです。かつて宮中では、大みそかの夜に鬼の姿の扮装をした人を矢で射て、災厄を追い払う儀式として行われていました。

  追儺(ついな)より四方拝に続く(徒然草)
  (大みそかの追儺の儀式から元旦の四方拝の儀式に続く)

 昔は、人間の力の及ばない災厄は鬼のしわざと考えられ、鬼は恐ろしいものであるとされていました。『伊勢物語』では、愛する女性を鬼に食べられてしまうという物語が紹介されています。

  鬼、はや一口に食ひてけり(伊勢物語)
  (鬼は、(女を)すでに一口で食べてしまった)

 一方、『枕草子』にはこんな愛らしい“鬼”も登場します。

  蓑虫(みのむし)、いとあはれなり。鬼のうみたりければ(枕草子)
  (ミノムシはあわれ深い虫だ。鬼の生んだ子なので)

 木の枝にぶら下がる姿が独特であるために「鬼の子」と呼ばれたのでしょうか。今では町中でミノムシの姿を見かけることも少なくなりました。
 また、鬼といえば豆まきですが、古代の人々にとって豆は貴重なタンパク源でした。冬の滋養ともされたのでしょうか、納豆は冬の季語とされており、こんな川柳も詠まれています。

  納豆をたたきあきると春が来る(誹風柳多留)
  (納豆汁のために、納豆をたたくのがあきてくると春が来る)

 節分の翌日は立春、春はすぐそこです。

  梅の花今盛りなり百鳥(ももとり)の声の恋(こほ)しき春来(きた)るらし(万葉集)
  (梅の花が今を盛りと咲いている。さまざまな鳥の声が恋しい春がきたのだなあ)

 地主神社の梅も春を心待ちにしています。皆さまのご参拝を心よりお待ち申し上げます。おしあわせに。


平成22年1月「えんむすび初大国祭」「石笛」「祝詞(のりと)」

 新年あけましておめでとうございます。

 元旦から3日までの午後2時に行われる「えんむすび初大国祭」は、新しい一年の始まりを告げる行事です。古代縄文より伝わる石笛を奏でて、新年のご利益のある歳神様をお呼び申しあげます。
 石笛はその名の通り「石」の楽器ですが、その「石」や「岩」は、長い年月を経ても同じ姿をとどめているためでしょうか、古来より神様がお降りになり宿られる磐境(いわさか)とされることもありました。

  天(あめ)の石位(いはくら)を離れ、天の八重たな雲を押し分けて、(古事記)
  (天上にある岩でできた神様の居場所を離れ、たなびく雲を押し分けて)

 笛は、人が息を吹きこんで初めて美しい音色を奏でます。「息」は「生き」に通じ、命そのものでもありました。『日本書紀』では、伊奘冉尊(いざなみのみこと)の息から風の神様が誕生する場面が描かれています。

  吹き撥(はら)う気(いき)、神と化為(な)る。(中略)是(これ)、風神(かぜのかみ)なり。(日本書紀)
  (伊奘冉尊(いざなみのみこと)が霧を吹き払った息は、神様になりました。これは風の神です)

 『万葉集』でも、命がけの気持ちを「息の続くかぎりに…」と表現しているほどです。

  息の緒に我れは思へど人目(ひとめ)多みこそ吹く風にあらばしばしば逢ふべきものを(万葉集)
  (命がけであなたを思っているけれど、人目が多いのでなかなか会えずにいます。吹く風であったらたびたび会えるのに)

 また、「えんむすび初大国祭」では、厄除け開運お祓いのあとに、縁結び良縁達成の「祝詞(のりと)」を読み上げます。息とともに語りだされる「言葉」には神様のお力が宿るとされ、良い言葉は幸せをもたらすと信じられてきました。

  そらみつ 大和(やまと)の国は(中略)言霊(ことだま)の幸(さき)はふ国(万葉集)
  (やまとの国は、言葉の力が満ち、幸福があふれる国です)

 お祭に参加された方には、無料にて「開運こづち」をお授けしております。
 本年も皆様に素晴らしいご縁がございますように。
 おしあわせに。

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