令和6年4月 「虹始見」「鏡」「面影」「桜」「光源氏」
空に虹がかかるのを見ると不思議に胸がときめくものです。春は虹を見かけることが増え始める季節。古代中国から伝わった季節の区分法である「二十四節気」では、4月14日を「虹始(はじめて)見(あらわる)」としています。
古来、虹は天と地を結ぶ通路とされてきました。『日本書紀』には虹のたもとで神さまの鏡を見いだす場面も描かれています。
虹の起(た)てる処(ところ)を掘りて、神鏡(みかがみ)を獲(え)(日本書紀)
(虹が出た場所を掘ると神鏡(しんきょう)があり)
見る人の面影を映す鏡は、「面影」の枕詞でもありました。『万葉集』には、愛する人の面影が鏡のように夢に現れることを願う歌も収められています。
里遠み恋ひわびにけり真澄鏡(まそかがみ)面影去らず夢に見えこそ(万葉集)
(あなたのいる里が遠いので恋い悩んでしまった。鏡に映る面影のように私のそばを離れないで、夢に出てきてほしい)
面影といえば『源氏物語』の光源氏は、見初めた人の面影を桜にたとえた歌も詠んでいます。
面影は身をも離れず山桜心のかぎりとめて来(こ)しかど(源氏物語)
(山桜のように美しいあなたの面影が私の身を離れません。私の心は全部そちらに置いてきたのですが)
地主神社には、光源氏のモデルとされる源融(みなもとのとおる)の父君であられる嵯峨天皇が愛でられたと伝えられる桜がありますが、残念ながら現在は境内にお入りいただけないのでご覧いただくことはできません。
地主神社は社殿修復工事のため終日閉門しておりますが、
恋愛成就や家族の健康をねがうお守り、
ご祈願についても郵送で受け付けております。全国から郵送で寄せられるご祈願の一つひとつについて神官がお名前、ご住所、生年月日を読み上げ、神さまに縁結びや開運招福を祈願しております。
どうぞこの春も皆様に素晴らしいご縁が訪れますように。おしあわせに。
令和6年3月 「ひな祭り」「菱餅」「母子草」「人形(ひとがた)」「春分の日」
3月3日は、ひな祭り。ひな祭りの菱餅(ひしもち)は、もともと菱(ひし)の実を粉にしてついた餅でした。菱は池や沼に菱形の葉を浮かべる水草で、種子は食用となります。
君がため浮沼(うきぬ)の池の菱摘むと我が染めし袖濡れにけるかも(万葉集)
(あなたのために浮沼の池の菱を摘んでいたら、私の染めた袖は濡れてしまいまいました)
また、昔の中国では三月三日に母子草(ははこぐさ)の草餅を食する風習がありました。日本には平安時代に伝わったといわれます。
花の里心も知らず春の野にいろいろ摘めるははこもちゐぞ(和泉式部集)
(花の咲く里の心も知らず、春の野でさまざまに摘んだ母子草でつくった母子餅です)
母子草は別名を御形(ごぎょう)といい、春の七草の一つに数えられます。御形の「形」は紙を人の形に切った「人形(ひとがた)」のことです。昔はこの人形で身体を撫でてから水に流し、心身の安全を祈りました。
舟にことごとしき人形乗せて流すを見給ふに(源氏物語)
(舟に(おはらいをした)大げさな人形を乗せて流すのをご覧になると)
『源氏物語』の光源氏もおはらいをしたというこの紙の人形は、ひな祭りのひな人形の由来ともいわれています。
おひな様を飾ると、やがて3月20日は春分の日。少しずつ昼の時間が長くなっていきます。
地主神社は社殿修復工事のため終日閉門しておりますが、
恋愛成就や家族の健康をねがうお守り、ご祈願についても郵送で受け付けております。全国から郵送で寄せられるご祈願の一つひとつについて神官がお名前、ご住所、生年月日を読み上げ、神さまに縁結びや開運招福を祈願しております。
この春もどうぞ皆様に素晴らしいご縁が結ばれ、お健やかに春をお迎えいただけますように。おしあわせに。
令和6年2月 「閏年」「閏月」「バレンタイン」「カカオ」「立春」
このたびの令和6年の能登半島地震で被災されました皆様に心よりお見舞い申し上げます。
1日もはやく元の穏やかな日々を取り戻されますこと、被災地域の復興を心よりお祈り申し上げます。
早いもので今年も2月となりました。
今年は4年に1度の閏年(うるうどし)、2月は29日まである閏月(うるうづき)です。
平安時代に地主神社の地主桜を愛でられた嵯峨天皇は、御製の漢詩の中で閏月について詠まれました。
閏(うるふ)は是(こ)れ 新正(しんせい)の後(のち)
(閏月はお正月の後すぐに来た)
『蜻蛉日記』では、閏月の日にちを恋心になぞらえた歌も詠まれています。
年ごとにあまれば恋ふる君がためうるう月をばおくにやあるらむ(蜻蛉日記)
(年ごとにあなたの恋心が余るので、そんなあなたのために閏月があるのでしょうか)
恋心といえば、2月14日はバレンタインデー。チョコレートの原料であるカカオが実る樹木はアオギリの仲間です。
アオギリは漢名を「梧桐(ごとう)」といい、『万葉集』には梧桐で作った琴が登場します。
梧桐(ごとう)の日本琴(やまとごと)一面(いちめん)
(梧桐の木で作った琴を一面(贈ります))(万葉集)
この琴を贈ったのは「令和」の元号の由来となった「梅花の宴」を催した大伴旅人ですが、ここでいう梧桐は桐であるという説もあります。
桐は木目が美しく、琴や箪笥などの用材として重んじられました。初夏に咲く紫色の花の美しさは『枕草子』でも讃えられています。
桐の木の花、紫に咲きたるは、なほをかしきに(枕草子)
(桐の木の花が紫色に咲いているのは、なんといっても趣があるもので)
桐の花が咲くのはまだ先ですが、2月4日は立春。暦の上ではもう春です。
袖ひちてむすびし水のこほれるを 春立つけふの風やとくらん(古今集)
(夏に袖を濡らしてすくった水が冬の間は凍っていたのを、立春の今日の風がとかすことでしょう)
地主神社は社殿修復工事のため終日閉門しておりますが、
恋愛成就や家族の健康をねがうお守り、
ご祈願についても郵送で受け付けております。全国から郵送で寄せられるご祈願の一つひとつについて神官がお名前、ご住所、生年月日を読み上げ、神さまに縁結びや開運招福を祈願しております。
この春も皆様に素晴らしいご縁が結ばれ、お健やかにおすごしいただけますように。おしあわせに。
令和6年1月 「元旦」「あけましておめでとう」「紫式部」「初夢」
あけましておめでとうございます。
元旦は初日の出をご覧になるという方もおられることでしょう。「元旦」の「元」は「始まり」という意味で、「旦」は地上(一)から太陽(日)が現れる姿を表しています。新年の始まりに最初に昇る朝日は、いつもと違ってひときわ清々しいものです。
かくて明けゆく空の気色、昨日に変(かは)りたりとは見えねども、ひきかへめづらしき心地ぞする(徒然草)
(こうして明けてゆく空の様子は昨日と変わっているとは見えないけれど、いつもと違って新鮮な気持ちになる)
新年に交わす挨拶である「あけましておめでとう」の「おめでとう」は、もともと「めでたし」といって、「愛(いと)おしむ」という意味の「愛(め)でる」に、「とても」という意味の「いたし」を付け加えたものでした。平安時代には「立派だ」「素晴らしい」と褒めたたえる表現とされ、紫式部の『源氏物語』では、光源氏が若紫の髪を「めでたい」と讃える場面も描かれています。
こぼれかかりたる髪、つやつやとめでたう見ゆ(源氏物語)
((若紫の)こぼれかかった髪がつやつやと素晴らしく見える)
昔から、言葉には「言霊(ことだま)」という不思議な力が宿り、よい言葉は幸いを招くと信じられてきました。縁起が良いとされる次のような和歌もあり、この歌を添えた宝船の絵を枕の下に敷いて眠ると良い初夢が見られるそうです。
長き世のとをの眠りのみな目覚め波乗り船の音のよきかな
(長い夜を眠りについている皆が目覚めてしまうほど、進みゆく船の波音の心地よさよ)
地主神社は社殿修復工事のため閉門しておりますが、
恋愛成就や家族の健康をねがうお守り、ご祈願についても郵送で受け付けております。全国から郵送で寄せられるご祈願の一つひとつについて神官がお名前、ご住所、生年月日を読み上げ、神さまに縁結びや開運招福を祈願しております。
本年も皆様に素晴らしいご縁が結ばれ、お健やかに一年をおすごしいただけますように。おしあわせに。